業務標準書 サンプル

全チャネル横断の数値集計 / トヨタ式「標準」の形をこの業務で試作したもの

このサンプルの読み方

これは何か

19ある横断業務のうち1つを選び、業務標準書として書いたらどうなるかの試作です。形を確認するためのもので、内容の正しさはまだ検証していません。

手順の中身は既存の研修資料に書かれている事実から組み立てたもので、実際の運用と照合していません。ツール名・画面名・時刻は仮置きです(実際の運用が未確認のため)。

What — 何をするか。手順そのもの Why — なぜそれをするか / 抜けると何が起きるか 急所 — 絶対に守る点。守らないと結果が壊れる

番号が赤の手順は、急所を含む=省略できない手順。

業務標準書 ST-05

全チャネル横断の数値集計

基本情報

業務IDST-05(第5章 横断業務 5番)
頻度毎日 / 1日1回
所要時間未計測 実運用で計測して埋める
担当マーケ部 責任者
前の業務なし(日次の起点)
次の業務ST-06 全体レポートの作成 → ST-07 ダッシュボード更新 → ST-09 メンバーへの指示
使うもの未確定 各媒体の管理画面 / 集計シート(ツール名は実運用で確認して記入)

この業務のWhy

なぜこの業務があるのか

日次の業務は「数字を見て、次の動きを決める」という1つの流れになっている。その起点がこの集計にあたる。

集計だけして指示を出さなければ意味がなく、数字を見ずに指示を出せば根拠がない。この業務は、その日のマネジメント判断の材料をつくるために存在する。

この数字の向こうにいる人

集計する「個人情報登録数」は、就活に困っている大学3・4年生が、DMからの電話を受け取り、自分に合う企業に出会う機会を得た数にあたる。

歩留まりが1ポイント落ちているのを見逃すと、その機会に届かなかった学生が毎日積み上がっていく。

手順

1

集計対象の日付を確定する

前日1日分を対象にする。当日分は途中経過なので使わない。

WHY当日分は1日が終わっていないため、前日までと比べると必ず少なく出る。途中経過と確定値を混ぜると、実際には落ちていないのに「落ちた」と誤判定する。
2

各チャネルの管理画面から数値を取得する

SEO / 広告運用 / サービスHP の3チャネルについて、それぞれの管理画面を開いて数値を取る。

WHYチャネルごとに管理画面が分かれているため、1箇所では揃わない。どれか1つを飛ばすと、翌日以降の比較で前日とチャネル構成が変わり、全体の増減の原因が特定できなくなる。
急所すべて同じ集計単位でそろえる。ツールをまたぐと「クリック」「セッション」などの定義がずれる。定義が違う数字を並べた時点で、歩留まりの計算が意味を失う。
3

取得する項目

チャネルごとに以下を取る。

チャネル項目
SEOPV / UU / 広告クリック数 / LINE追加数 / 個人情報登録数 / 登録者の年齢・学年
広告運用Imp / クリック / 結果 / 個人情報 / 学年 / 費用
サービスHPPV / UU / 個人情報登録数 / 登録者の年齢・学年
WHY登録者の学年まで取るのは、登録数が同じでも中身が変わっている場合があるため。大学3・4年生以外の登録が増えて数だけ維持されていると、DMが電話してもサービス利用につながらず、翌月以降に効いてくる。
4

歩留まりを計算する

各段階について「次の段階 ÷ 前の段階」を出す。

WHY数そのものではなく比率で見る。数は流入量に左右されるため、流入が減れば全段階が一律に減り、どこが壊れているか分からない。比率なら流入量と無関係に、どの段階で落ちているかが分かる。
急所比較する2つの期間は、長さを揃える。7日と30日を比べない。期間が違うと比率も動くため、実際には変化していない区間を「落ちた」と判定してしまう。
5

前日・前週同曜日と並べる

前日と、前週の同じ曜日の2つを並べる。

WHY前日だけでは曜日差と異常の区別がつかない。就活生の行動は曜日によって変わるため、「月曜だから低い」のか「異常で低い」のかを切り分けるには同曜日の比較が要る。
6

異常がないか確認する

次の3点を見る。

  • どの区間の歩留まりが、前週同曜日より下がっているか
  • 個人情報登録数が、目標ペースに対してどうか
  • 大学3・4年生の割合が下がっていないか
WHYこの3点が、そのままメンバーへの指示の材料になる。ここで異常を見つけられないと、この後の工程すべてが根拠を失う。
急所異常を見つけても、この業務の中では対策を打たない。原因の特定と改善は別の業務(第6章のPDCA)で行う。ここで慌てて手を打つと、複数を同時に変えることになり、何が効いたか判定できなくなる。
7

集計結果を保存する

日付・各段階の数・歩留まりの3つを、決まった場所に残す。

WHY改善を打った後に前後比較をするとき、過去の数字が残っていないと判定できない。「改善したかどうか」を測るための記録であり、報告のためではない。

標準から外れたとき

この手順で対応できない状況に出くわしたら

この業務の目的は「その日のマネジメント判断の材料をつくること」。その目的に照らして、材料が揃わない状況になったら報告する。

  • 管理画面が開けない / 数値が出ない → 集計できない旨を報告し、その日の指示は前日の数字で判断する
  • 数値の定義が変わった(ツール側の仕様変更など) → 過去との比較が成立しなくなるため、必ず報告する。黙って新しい定義で続けると、後から原因不明の断層ができる
  • 手順どおりにやると時間が足りない → 「守れない標準」なので、標準そのものを見直す。省略して続けない
この標準を変えたくなったら

変えてよい。むしろ変わらない標準は、何も改善されていないのと同じ。

「この手順は重複している」「こうした方が速い」と気づいたら、変更してこの標準書を更新する。更新したら下の履歴に1行足す。

更新履歴

日付変更内容理由変更者
2026-09-17初版作成研修資料の記述をもとに標準書として起こした柴田
履歴が増えないとき

この欄が長期間1行のままなら、標準が形骸化しているか、実態と乖離している可能性がある。使われていれば必ず改善点が出る。

設計の解説

ここから下は標準書ではなく、この形にした理由の説明になる。

なぜWhyを入れるか

Whyなき手順書 Whyつき標準書 「学年も取得する」 「学年も取得する」 登録数が同じでも中身が変わるため ある日、学年が取れなくなった (ツールの仕様変更) ある日、学年が取れなくなった (ツールの仕様変更) 「取れないから飛ばそう」 報告されない。数ヶ月後に発覚 「中身が見えなくなる」 目的に照らして異常と判断 → 報告
Whyがあると、手順書に載っていないケースでも目的から判断できる。これがトヨタ式標準と一般的なマニュアルの決定的な差になる。

3者が同じ1枚に乗る

トヨタ式・NT・NF の3つは、別々のものを求めているように見えて同じ1点に着地する。

要素誰に効くかこのサンプルの該当箇所
What(手順)ST — 具体・実物・番号付き手順1〜7
Why(原理)NT — なぜそうなるのかの構造各手順のWHY欄
Why(意味)NF — 誰のためか「この数字の向こうにいる人」
急所ST・NT — 必須と参考の区別赤番号の手順
更新履歴NT — 変えてよい対象だと示す更新履歴の欄
標準から外れたときNT・NF — 判断を委ねる目的から判断する節

「単独で最低限と理想の両方に届く案は無い」は間違いだった。
Whyを入れれば、1枚で両方に届く。

SDCAとの接続

SDCA(守り) 標準を定着させ、維持する S 標準化 D 実行 C 確認 A 処置 守られない原因を潰す 標準そのものを改定する PDCA(攻め) 新しい改善を計画して打つ P 計画 D 実行 C 確認 A 処置 研修資料 第6章が扱っている (現状こちらだけ) 土台
標準なくしてカイゼンなし。標準が無いと、改善の前後を比べる基準が無く、良くなったか判定できない。研修資料は PDCA だけを扱っていて、SDCA が抜けている。

確認したいこと

このサンプルで仮置きしている箇所
  • ツール名・画面名 — 実際に何を使っているか未確認
  • 実施時刻・所要時間 — 未計測
  • 手順5(前週同曜日との比較) — 実際にやっているか未確認。こちらの判断で入れた
  • 保存先 — どこに残しているか未確認
  • 業務ID の採番 — ST-05 は第5章の5番から仮置き

形について見てほしいのは次の3点。

#確認点
1Whyの粒度 — 各手順に1つWhyを付けたが、多すぎないか。読む気が失せないか
2急所の数 — 7手順中3つを急所ありにした。絞りすぎ・多すぎがないか
31業務1枚の分量 — この密度で64業務分を作ると、量として現実的か